海外山行 カムチャッカ半島 アパチャ山( 2741m )

このエントリーをはてなブックマークに追加

海外山行

カムチャッカ半島 アパチャ山( 2741m )

カムチャッカが外国人に開放されたのは、ソ連が崩壊しロシアになった1991年のこと。

この年に同志社大学山岳会がカムチャッカ半島最高峰のクリュチェフスカヤ山(4835m)に日本人として初登頂している。

そしてアバチャ山が最後に噴火したのもこの年である。

7月22日(水) 前夜投宿の京成成田駅前のホテルの無料シャトルバスで成田空港に着いたのは午前7時前であった。

まもなく横浜からの堀井さんも到着し、添乗員も現れた。

そして添乗員からの一言。

「飛行機がまだ到着しておらず、9時50分の出発は遅れそう」とのこと。

再集合の9時30分まで時間を潰し戻ると、飛行機は12時30分に飛ぶとのこと。

すでに2時間も時間潰ししたのに、まだ3時間も時間潰しをしなくてはならない。
2時間40分遅れで飛び立ったヤクーツク航空は青森上空を通り、およそ3時間20分でエリゾヴォの空港に到着。

着陸直前に見えた近くの山並みの谷筋には雪渓が残っていた。

バラック小屋のような建物で入国審査・通関を済ませ、約20㎞離れたカムチャッカ州の首府ペテロパブロフスク・カムチャツキー(舌噛みそう)の中心部にほど近いレニングラツカヤ通りに面したホテル、その名も「アバチャ」にようやく到着。

南西方向にはバチャ湾も見えている。

すでに20時を過ぎているが、北緯53度なので外はまだ明るい。

経度は日本とあまり違わないのに時差は3時間もあり、日本時間では17時だから当然かもしれない。

7月23日(木) 朝から雨がしとしと降っている。

市場の10時開店に合わせ9時45分にホテルを出発。

6輪駆動の軍用トラックの荷台を十数人が座れるように改造したバスに乗り込む。

市場内は魚介類、肉類、野菜類、果物類などのブースが分かれていて、いずれも豊富に並んでいる。

しかし野菜などは中国からの輸入物が多いらしい。

ここで目を惹くのはなんといってもサケやイクラなどである。

イクラのどこに差があるのか見当もつかないが、安い物と高い物では倍ほどの差がある。

さらにスーパーマーケットに寄ったが、こちらは日本のスーパーと変わらない感じである。

店内は閑散としているが、時間帯によっては混むのであろうか?
いよいよアバチャのベースキャンプへと向かう。

エリゾヴォ方面に向かって30分ほど走り脇道に入ると、すぐに未舗装になる。

それも束の間、干上がった川の荒れた河原を走るようになり、雪渓を横断したりもする。

2時間ほどで標高800mのアバチャ・ベースキャンプに到着。

多くのコンテナハウスが食堂を取り囲むように並んでいる。

コンテナ内には2段ベッドが置かれていて、8人が泊まれるようになっている。

雨は止んだものの、アバチャ山はガスに姿を隠したままである。
遅目の昼食を摂り、午後3時キャメル山へ足慣らしに出かける。

キャメル山はその名の通り二瘤ラクダの背のような高さ1200m程の岩山で、アバチャ山とコリャーク山(3456m)の鞍部の少し手前にある。

アバチャ山への道標を見送り、やがて雪渓に出る。

今年は雪解けが遅いらしく、そこかしこに雪渓が残っている。

アバチャ山の大きな裾が見えるようになるが、頂にはまだ雲がかかっている。

キャメル山直下の雪渓を登り、上流側の山裾を回り込むようにして、裏側から最後は砂礫を踏んで瘤の間に登り着く。

低いほうの瘤に登ると、眼下に辿って来た雪渓と、その先遠くにベースキャンプが望めた。

下流方向に砂礫の尾根を下って、登って来た雪渓に出会い、往路を辿って6時頃ベースキャンプに戻って来た。
夕刻、といっても10時頃であるが、夕日に照らされたアバチャ山頂が姿を現した。

噴煙が真横に流れていて、山頂は風が強いようだ。コリャーク山の山頂部分はまだ姿を隠したままであった。

7月24日(金) 快晴である。

アバチャ山の肩から太陽が顔を出す。

噴煙は真っすぐ上がっており、風も無いようだ。

コリャーク山も中腹に薄い雲が掛かっているものの、山頂は姿を見せている。

久野さんはガイドと共にフラワーウォッチングに出かけることになっており、残る11人が登山ガイド3人、通訳、添乗員と共に6時前に出発する。

行程中唯一の道標に従い、キャメル山への道と分かれて砂礫の比較的緩やかな登山道を行く。

標高1000m位であろうか、キャメル山が真横に眺められるようになる頃から道は傾斜を増す。

標高1700mで外輪山に出る。

キャメル山は眼下になり、その後ろにコリャーク山の優美な姿がある。

その斜面に残雪がユニークな文様を描いている。
ところどころ残雪を踏みながら外輪山を辿り、標高2200mの避難小屋に着く。

アバチャ山の山体は鉄分を多く含んでいるのか、雪のない箇所は赤茶けた色をしている。

上空に少し雲が広がり始めたが、噴煙は相変わらず真っすぐ上がっている。

ここで昼食。といってもクラッカーやリンゴ、チョコレートなどである。

山水谷・コリャーク山を背にアバチャ頂上直下を登る

▲コリャーク山を背に登る
大きな雪渓を横切り、いよいよアバチャ山火口を目指しての長い急登が始まる。

ここで残念なことに堀井さんと三宅さんが足の故障のため下山することになる。

赤茶色の火山礫の急登は足元が不安定で体力の消耗が激しい。

さらに上部では火山礫の下が凍っている。

アイゼンを付けるのも面倒なので、すぐ横の残雪を直登する。

火口縁直下ではロープが張ってあり、これを掴んで登り火口縁に達する。なんと足元から蒸気が出ており、硫黄臭がする。

山水谷・コリャーク山を背にアバチャ山頂にて

▲アパチャ山頂上で登頂した9人
日本なら絶対立ち入り禁止のはずだ。

反対側の火口縁は台地状になっており、残雪の中に黒い溶岩があちこち顔を覗かせる奇怪な風景である。

火口縁を歩き、10分ほどで最高点に着く。

空は快晴であるが、谷間には雲が漂っている。南東に雪稜が続きその先にコゼーリ山(2189m)の頂が望める。

穏やかなこの日はアメリカ人の団体、日本人の団体(同じツアー会社の別グループ)、上海からのカップルなど数十名が登頂を果たしたであろう。
普段は富士山の砂走りのように下山するらしいが、今年は残雪が多く主に雪渓を下る。

避難小屋の少し下で外輪山から離れ、雪渓を横断して尾根筋を下る。登った隣の尾根である。

かなり下ったころ大きな雪渓に出る。

スキー場のような斜面の雪渓を下り、ようやくキャメル山からの雪渓と合流する。

午後7時、ようやくベースキャンプが見えると、久野さんが手を振っている。

あとから出たパーティが次々と先に帰って来て、あまりの遅さに待ちわびていたそうである。
夕食は添乗員特製のイクラ、サケ、タラバガニの海鮮丼! 昨日の市場で仕入れてきたらしい。

現地の料理も美味しいのであるが、新鮮な海鮮丼は皆の舌を満足させるものであった。

7月25日(土) 今日も快晴。

ベースキャンプではジリス(マーモット)が走り回ったり、日向ぼっこをしている。

コンテナハウスの下に棲み付いているらしく、人慣れしていて食べ物を差し出すと、立ち上がって両手(?)で受け取って食べている。
改造バスでベースキャンプをあとにし、ヴァチカゼツ山麓へ。

今日はフラワーウォッチングである。

緯度が高いだけに高山植物(日本での)が其処ここに咲いている。

さらに標高わずか1556mのヴァチカゼツ山にはカール地形もある。

花も景色も良いのだが、蚊を中心にやたら虫が多く、防虫剤や蚊取り線香ではとても役に立たず、防虫ネット必携である。

専任のフラワーガイドが説明してくれるが、花の種類が多すぎてとても覚えきれない。

ただミヤマ○○やエゾ○○がチシマ○○となる花も多くある。

その中でも驚きとともに人気があったのは大きな群落をなすキバナアツモリソウである。
今日はランチのために料理人付きで、フラワーウォッチングから戻るとサンドイッチをメインにしたランチパックが用意されていた。

たた虫が飛び交う中での食事は落ち着いて食べれたものではない。

昼食後はエリゾヴォのスーパーマーケットでお土産の買い物。

そしてバラツンカ温泉へ。

ホテルからは徒歩5分ほどのところにあるが、温泉とはいっても日本と違い、水着着用の温水プールのようなもの。

夕食時、添乗員から重大発表が! 明日搭乗予定の飛行機がまだ到着しておらず、明日の時間通りの出発は難しいと。

7月26日(日) 朝食時の皆の関心事は我々が搭乗する飛行機。

案の定まだ到着しておらず、チェックアウトの12時まで時間を潰すことに。

温泉に行く人、周辺を散策する人等々。

私は部屋で読書をして過ごす。予定では12時30分に飛行機が飛び立つことになっているのに、12時からホテルのレストランで昼食。
飛行機が来ないことはないだろうとのことで、とりあえず空港に向かいバスで待機することに。

空港の駐車場からは、滑走路の向こうにコリャーク山とアバチャ山が見えている。

ヤクーツク航空機が2機駐機しているが、どこへ向かう飛行機かは不明。やがてその1機が成田行きと分かり、ようやく帰国の目途が立った。

しかし貰った搭乗券には、搭乗開始11時50分、出発19時の7時間遅れになっている。

ということは成田着が19時50分。

入国審査、荷物を受け取り通関して、その日の内に家へ帰れるのか?

みな新幹線などの時間を調べ始めることに。

ヤキモキした一日であったが、飛行機は18時15分に出発。

成田で荷物も受け取ると挨拶もそこそこに帰宅の途に。
山行中は天候に恵まれ、登山もフラワーウォッチングも十分に楽しめて目的は果たせたが飛行機にヤキモキさせられる5日間でした。

[水谷 透 記]

[参加者] 久野菊子、高木基揚、高橋美江子、竹中佳美、長屋桂子、林 靖子、藤井法道
藤田純江、堀井昌子、水谷 透、三宅一正、他1名

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です