5月バリエーション山行
漆 山 岳 (1393.1m 二等三角点)
▲長い稜線歩きの末辿り着いた漆山岳頂上で
この山は飛騨市の旧宮川村と旧神岡町の境にあり、東側が高原川へ一気に切れ落ちている。山頂部は高原状で、炭作りに木を切ったため高木が少なく笹に覆われてしまったようだ。したがって雪が無ければ到底登頂は望めない。この山に登るには、残雪期にソンボ谷林道を利用するか高原川沿いの西漆山集落から急斜面を攀じるようだが、体力不足の我々は、宮川から池ヶ原湿原まで乗り入れ、北に続くなだらかな稜線をたどることとした。
早朝、美濃の総合庁舎付近に全員集合。真っ暗闇の中高速道で高山を目指す。宮川町打保の集落を抜けるとすぐ宮川を渡り湿原へ行く林道に入る。林道は一週間前に開かれたばかりだと云うのに、数日来の高温のためか路肩の雪は少なく、先が思いやられる。池ヶ原湿原の駐車場に着くと既に10台程の車があった。
車道を800m戻り左(東)の谷の枝林道へ。倒木を跨ぎ雪を踏むようになるが、残雪は少ない。谷奥のT字路から左山にして植林帯に取付く。雪は締まっているが所々途切れており、雪を拾い枝を掻き分けながら、最後は直登して雪田のある最初のピークに飛び出す。視界が開け西に金剛堂山、白木峰が残雪をまとい目に飛び込む。辺りは新緑、ブナ林。思わず歓声が漏れた。少し行くと今度は右に北アルプスが、剣岳から笠ヶ岳まで広がる。見惚れてしまう光景だ。実にいい時期に来たものだと思う。
一旦下り林道に出、三角点峰への登りになる。雪は無く最初は胸ほどの細めの笹であったが、次第に太く背丈を越す根曲り竹に変わる。強引に掻き分けて雪のある所に出ると、そこが三角点峰山頂であった。笹と雪の中を探すと、運よくY氏が三角点を見つけてくれた。タッチ。三等点桂谷。さっそくF氏が真上の枝にピンクのリボンを結んだ。ここでようやく目標のピークが顔を見せるが、まだ遠くはるか。しかし空の青、木々の緑と雪の混ざる広々とした風景を目にすると、益々登高意欲が湧いてくる。
しかしながら、此処からが核心部であり手強い道行となった。稜線上は当然日当たりがよくヤブ(主に根曲り竹)が出ており歩き難い。南斜面も同様で時々残雪が途切れる。大いに助かったのは、北斜面ではほとんど雪が被っていた事だ。これで下山の時の登りでヤブを漕がずに済む。くねくねと稜線は曲り、何度もひだを上り下りし、残雪を踏みヤブを分け、やっとと思った雪田のさらに先のピークが頂上であった。
漆山岳山頂はなだらかな丘状で、残雪脇のヤブの中、直径1m程だけ笹の無い空間に三角点が有った。思わず駆け寄るようにして標石に触った。北面はヤブが高く視界が遮られていたが、展望はすこぶるいい。東は劔、立山、薬師、黒部五郎、槍、笠と連なり、南に流葉山が近く。西にまわって少し霞んだ白山、その右に三ヶ辻、金剛堂山、白木峰がひろがる。天気は良く、のんびりと景色を楽しみながら昼食をとる。
帰りは早い。ヤブも下りとなればさほど苦にならない。とは言え長い雪道はやはり疲れる。三角点峰を下った林道からは、遠回りになるが林道を歩くことにした。林道は初めこそ雪が詰まっていたが、日向側に回ると無くなり途端に暑くなる。最後の駐車場までの車道歩きはダラケてしまった。駐車場に着くと、体調不良で参加できなかったNさんが来ており、コーヒーを振舞っていただいた。予定より早く下山できたので、湿原を散策。小ぶりの水芭蕉、リュウキンカが咲き乱れていた。
日焼けとヤブ傷、疲労感さえも充足した山旅を彩るものであった。 [神山敬三 記]
[日 時] 平成27年5月3日(日)
[場 所] 岐阜県飛騨市宮川町洞 ~ 宮川町洞・神岡町東漆山 境
[参加者] 今峰正利、神山敬三、後藤 允、高木基揚、竹中美幸、竹中佳美、林 靖子、藤井法道、山本善貴、(縄田さかゑ)
[タイム] 池ヶ原湿原駐車場6:30-桂谷三角点9:25-漆山岳山頂10:25~11:10-池ヶ原湿原駐車場14:10(解散)
[地 図] 打保(高山14-2)、鹿間(高山10-4)