平成26年山岳講演会 山小屋から見た日本のエネルギー問題と「山の日」 

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平成26年11月14日 山小屋から見た日本のエネルギー問題と「山の日」 

山岳講演会

[演 題]  山小屋から見た日本のエネルギー問題と「山の日」  [講  師]  日本山岳会会長  森 武 昭  氏

はじめに
皆さんこんばんは。今日こういうお話をする機会を与えていただき、まことにありがとうございます。寒い日になりましたけれど足を運んでいただき、本当にありがとうございます。
1年近く前に高木支部長から「何でもいいですからお話しして下さい」と言われお引き受けしたのですけれど、何をお話ししようか悩みました。その頃には山の日が決まっているだろうから、日本山岳会の会長としてそれを話そうかと思ったのですけれど、それだけで1時間話すのはちょっとつらい。私は今までいろいろと山小屋のエネルギー問題に携わってきましたが、それが今後平地での生活でも同じことになっていくということで、今勤務している大学で時代の先端をいくような新しい取り組みをしています。それで表題のように「山小屋から見た日本のエネルギー問題」
ということで、そのようなエネルギーの話をさせていただこうと思います。どうぞよろしくお願いします。
山小屋で一番最初に取り組んだのは、岐阜県と長野県の県境にある穂高岳山荘です。ちょうど3000mの稜線にあるこの小屋で、太陽光発電と風力発電をやりました。その次に岐阜県の双六小屋で太陽光発電をやりました。その後、一昨年講演された穂苅さんが経営する槍沢ロッジで小水力発電をやって、それから上高地の日本山岳会の山岳研究所でやはり小水力発電をやりました。あと穂高岳のちょうど反対側の蝶ヶ岳の小屋で風力発電の研究、これ以外にも沢山あるのですけれども代表的なのはこういうところです。

14-1.講演会1

太陽光発電
まず太陽光発電ですけれど、今から30年も前になりますが穂高岳山荘のテラスに設置しました。もちろんそれで山荘全部の電気を賄うことはできませんけれど、20~30人のお客プラス従業員の電気を賄うという仕組みです。ここで私が一番最初に勉強したのは、発電量をなるべく多くしようということで20°くらいの角度で設置したのですけれど、これはあまりいいことじゃないということが分かりました。何故かというと、無理に角度をつけると台風などの風圧荷重に耐えるために、架台をものすごくしっかりしなくてはならないのです。そうすると全体が重くなるということで、現在は屋根にベタッとくっつける方式にしています。発電量は7%くらい減るのですけれど、機械的強度から考えるとコスト的に見合うということが分かったのです。穂高岳山荘の次に双六小屋で太陽光発電を設置しましたが、最初から屋根にくっつけました。
平地でも家庭で太陽光発電を設置する時は、傾斜のある屋根の時はみな屋根にベタッとくっつけて無理に角度をつけることはしないと思います。角度をつけると下の架台にものすごく強度がいるので大変なのです。フラットな屋上に設置する時も、発電量からすると角度はその場所の緯度に合わせるのが一番いいのですけれど、そうしないで大体5°とか10°くらいにやっています。やはり風圧荷重に対する問題でそういうふうにしているのです。
山小屋で太陽光発電を設置して何が一番喜ばれたかというと、発電機というのは大体音がうるさいので小屋の中心から離れた場所、小屋によっては別の建物にあります。山小屋の従業員は朝暗いうちに起きて食事だとかの準備をします。そのため真っ暗な所を発電小屋に行かなければならず、これは天気の悪い時などはかなり危険なことなのです。現にそういうふうに外に出て大きな事故を起こした事例もあるのです。太陽光を設置してバッテリーに蓄電しておくと、朝起きるとすぐに点灯でき従業員は明るい所で作業ができるのです。バッテリーを有効に使うという意識も出て来ました。それでずいぶん喜ばれましたが、これも30年前の話です。
太陽光の設置はプロを雇うとコスト的に高くなります。ヘリコプターで機材を上げるだけでも高くなるので、プロの設置業者に頼むと特に高くなるのです。それで私は、学生を鍛えて全部学生にやってもらいました。それだと飯代だけで済むということで、最初の頃は学生のボランティアというか卒業論文の一環としてやっていました。
技術的な話になりますが、太陽光で厄介なのは日射強度が変わるので一番電力がとれる点が変わるということです。日射条件が変わってもピークで発電するようにコントロールしていかなければならない。それで考えたのは1秒間に1回スキャンして最大電力点を見つけることです。そうすると雲や何かで条件が変わっても、1秒間の間に関して言えば最大電力でできるという発明をして、これで実は特許を取ったのです。この方式でやると、大体14~15%発電量が増えるということを研究としてやったのですね。
太陽光発電の特徴は、何といっても保守が不要だということで、これが最大の利点です。ですから各家庭で設置しても全然問題ないのです。南向きで影がほとんど生じない場所に設置すると常時発電量に換算すると定格電力の12~10%を発電します。例えば、一般家庭の多くは3.5KWというのが一つのパターンですが、それは最大で発電した時が3.5KWのわけです。夜は発電しないし天気が悪いと発電しないから、1年間でならすと大体能力の10%、350Wの電気を常時使っても大丈夫ですということです。逆に言うとそれぐらいの量しか発電しなので、これが太陽光の弱いところです。それを挽回するためにはメガソーラーみたいに広い面積一面に太陽光発電を設置しなくてはいけないということです。広い面積がいる、これが太陽光発電のネックです。

風力発電
次に取り組んだのは小型の風力発電です。風力発電で何が一番難しいかというと、風は強かったり弱かったりといろいろ変化します。風が強い時プロペラを横へ向けないと壊れるのです。そのためのいろいろな方式を穂高岳山荘で苦労してやりましたけれど、一番いいのは極めて原始的な方法でした。穂高では大体岐阜県側から西風が吹きます。風が当たるところにベニヤ板を置いて、風が強くなるとベニヤ板が引っ張られ、それに紐がついていて紐がプロペラを引っ張り横へ向くのです。「極めて原始的な方法だがそれが一番いい、あまり変なハイテクを持ってくると後のメンテが大変だ」と今でもこれでオーナーはやってます。
私は、今お話しした穂高岳山荘の上高地をはさんで反対側にある蝶ヶ岳の小屋でも風力発電を設置しました。けれどこれがなかなか大変でした。一番いい条件で600W発電する計画でしたが、小屋のトイレの20Wの白熱電球1個しか使えない。山の上なら風が来るからいいと思いますけれど、そのくらいしか発電しないのです。何が難しいかというと、風が一定じゃないということもあるのですけれど、羽根に対して風が直角に当たらないといけないのです。ここでも西風が吹くので小屋の前に出したいのですけれど、前は登山道があるから危なくてだめなのです。登山道から引っ込んだ場所へ持って来ると、風がみんなフーッと上へ抜けていって効率が良くない。今でも一応やっていますけれど、あまり効果を発揮しないとうことが分かりました。
これはある業者が設置した仙丈小屋の話しですが、バイオトイレがあり、それをある程度温めるためにヒーターとして太陽光と小型風力をハイブリッドで使っているのです。ところが、風力はほとんど働きません。何故なら後ろに建物があって、風がいくら来ても風が通り抜けずに乱れてしまい全然発電しない。原理的にももう無理です。建物が近くにあるとお互い干渉し会ってほとんど発電しないのです。データを聞いたら2~3%しか発電しないということでした。それじゃ建物の屋根の上に設置したからいいじゃないということですが、裏に森があって風が通り抜けないのでこれも全然だめです。こういうふうにして、小型の風力発電というのは地形の影響をものすごく受けるのです。私も大学で実験しましたが、建物がちょっと横にあるともう全然だめなのです。
かつて「回らないつくば市の風車」ということで有名になりましたが、こういう小型の風力発電をつくば市の小中学校に設置したのですね。理系の先生じゃなかったと思いますけれど、早稲田の先生が発電量を予測したのです。ところがその10%どころか数%しか発電しないというので、つくば市が損害賠償を要求して裁判になったのです。一審ではつくば市が3割で早稲田が7割の判決だったのですけれど、二審では逆になって最高裁も二審を支持しました。つくば市も風力発電に対して知見を持っていなかったという責任を問われたわけです。
どうしてそんなことになるかというと、今は各地に大型の風力発電がありますね。あれは地上から大体50mくらいの高さにあって、そこで回っているのです。そのくらい高いと地形の影響をほとんど受けない。そうすると、国が作っている風強マップというのがちゃんとあって、それで計算すると大体予測通りに発電し採算ベースに乗るのです。ただ、これもまた問題が多くて難しくなっているのですけれど、これは後でお話します。
一方、低い所では回りに木だとか建物とかがあるとその影響を受け、その風強マップをもとに計算しても全然合わないのです。それは私たちから見たらごく当たり前の話なのですね。このように裁判になるくらい小型の風力発電は難しいのです。ですから、家庭で太陽光発電はよく見ますけれど、小型の風力発電を家庭で設置してるというのは恐らくほとんど見ない。ですから私も今はほとんどやっていません。

私は今、秋田県のにかほ市という所で垂直軸の風車を使った風力発電の実験をしています。垂直軸は風の向きがどこから来ても大丈夫だというのが特徴ですけれど、これを南極に持っていこうということなのです。南極では風力発電は非常に有効なのです。どうしてかというと、今「しらせ」は南極に向かっていますけれど「しらせ」の運ぶ荷物の大体2/3は燃料油です。油と食料はもう命の綱ですから。他にいろいろな設備があって、研究のための設備というのは5%くらいしか積めないのです。もうこれ以上油を積むことはできないので、南極でも自然エネルギーを積極的にやろうということなのです。今私がその責任者をやっているのですけれど、南極では多分風力発電が優秀な力を発揮するだろうという見通しでいます。にかほ市で実験しているのは1基20KWですけれど、これを南極で5基設置していく計画です。
先ほどの大型の風力発電の問題ですけれど、一つには発電量の変化が激しいことです。一定の風というのはめったに吹かないから当然ですけれど、発電量が多くなると電力系統が維持できなくなります。維持できなくなると停電が起こるということです。それを防ぐためにはバッテリーで貯蔵するしかないのですけれど、容量に限界があります。
さらに、最近は騒音、電波障害、景観、動植物等の環境問題が非常に多くなってきました。動植物というのは渡り鳥のバードストライクですね、これがけっこう多いのです。それから山の中に設置しようとすると、そのために幅4mの道路を取り付けなくてはならない。いくらエネルギーは自然に優しくても設置するのが自然破壊じゃ困りますよ、という指摘があります。また、最近大きな問題になっているのが超低周波振動です。羽根が回ると0.5から1サイクルくらいの超低周波の振動がズーッと地面を伝わるのです。これは人間がものすごく不快感を感じるということで、これも問題になっています。そのため、ヨーロッパでよくやられているのですけれど、最近は海上に設置する、そういう時代になってきたのです。
ということで風力発電に対する私見を述べますと、コストを追求すると大型化になる。大型化すると環境問題も複雑化して、設置場所が洋上とかに限定されてくる。小型風力は一見環境に優しいけれど能力を発揮しない。山岳地域では保守も含めて問題が多くて普及は望めない。八ヶ岳でも若干やっている所がありますけれど、砂なんかが飛んできますので大体2年から3年くらいで羽根を交換しないと駄目なくらい傷むのです。そういう意味でも非常に難しい。せめて南極でこれから本格的にやっていこう。南極では建物からかなり離れた所に設置しますので音の問題もありません。そういう段階です。

小水力発電
次に取り組んだのは小水力発電です。小水力発電は沢の水を引き込んでタンクに貯めて、そこからパイプを通して落とし発電します。発電後の水は飲料水でも使えるしまた元の川へ戻します。上高地の上流、梓川に注ぐ沢に発電小屋を建て1KWの発電機を設置しました。小さいものですが、水力発電は1KWだと常時1KW発電します。さっき言ったように太陽光は大体10%しか働かないわけですから、太陽光発電に置き換えると10KWに相当する。設備の利用率が非常に良いというのが水力発電の一番の魅力なのです。小さな350W程度の発電機で定員が50~60人の山小屋を十分賄えるのです。
これはもう15年前に私がやったのですけれど、お椀のような形をしたベルトン水車というのを使った非常にシンプルな構造です。当時は見学者が非常に多かったのですけれど、今ではもう少し規模が大きい小水力を各地でやり始めています。皆さんご存知ないかもしれないけれど、農業用水とか下水道とかいろいろな水を使ってやっています。岐阜県は特に熱心で、そういう小水力の協議会があります。私も全国の協議会の理事をやってますけれど、そういうことで水力は今元気な状態にあります。
水力では落ち葉だとか砂だとかの異物が入るのを防ぐのが技術的に一番難しいのです。何も対策をしないと、落ち葉が皆タンクに入るので大変なのです。上高地の小水力ではパイプの上をバーベキュー用のネットで囲っています。落ち葉が貯まるとだめなようですけれど、実はネットは下からちゃんと入るようになっているのです。これで1年間ほとんどメンテナンスをやらなくて済みますけれど、うちの学生がこういう方式を開発したのです。
私は水力発電で一番勉強したのは、発電機とバッテリーの間の問題です。太陽光は特にそうですけれど、水力発電でもインバーターで直流から交流に変換してバッテリーで貯めるのです。バッテリーというのは充電しすぎても放電しすぎてもだめで、ある範囲内でしか使えないのです。電圧もある範囲で電流もある範囲で使わないとだめなのです。山小屋では負荷をいっぱい使ったりあるいはほとんど使わない時があるので、いつもバッテリーを監視して守ってやらなければならない。それをマイコンを使って負荷を制御する装置を作ったのです。ある範囲から飛び出ると負荷の制御装置が働いて保護してやるのです。バッテリーが「もう電気が足らなくなってくるよ」と言うと、優先度の低い所から負荷を切るのです。大震災の後東京などで計画停電をやりましたけれど、計画停電をすると全部電気を落とさなくてはならない。山小屋ではそれでは困るので優先順位をつけて、片方は冷蔵庫だとか通信、照明だとかの重要な器機の系統、片方は炊飯器とかポットとか時間を特定しなくていい優先度の低い器機の系統に分けて制御をするという装置を開発したのです。これは山小屋で非常に喜ばれました。実は今日の最後に出てくる結論は、こういうことを平地でもやらなくてはいけない時代に今後なっていくであろうということなのです。
小水力発電の長所は、流量が確保できたら常時安定した発電を得ることが期待できることです。短所は立地条件が限られるし落ち葉や砂などの対策が必要、それから大水に対する対応が必要だということです。山小屋では管理人がいますので、大水になろうとすると発電を止めてバイパスで水を流してダウンさせます。今後の展望ですけれど、商用電源との連携により効果が高まることが期待されますけれど、これは現にもう始まっています。価格設定がきわめて重要ですけれど、これも割合いい値段で出来そうなので今後増える可能性が大だということです。電力貯蔵は今はバッテリーが中心ですけれど、マイクログリッドという方法もあります。これは後で話しますけれど、そういう中核になり得ると思います。
最後に小水力発電の最大の課題は水利権というややこしい問題があることです。水に対して必ず水利権が設定されていて、それをどうクリアするかが問題です。農業用水には農地改良組合とかという団体がちゃんとあるのです。そこが自らやるときは大丈夫ですけれど、一般の人がやる場合にはその水利権をクリアするのが非常に難しい。さらに、水利権がきちっと確定している場合は水利権を買うかお金を払って使う権利をとれば法的に問題ないからいいですけれど、慣行水利権というのがあってこれが一番難しい。そういう水利権は法的に設定されていないけれど、昔からの慣行でこの水は我々が農業で使うのだとかいうのが多いのです。そういう水は手がつけられません。そういう水利権という難しい問題が水力発電にはあるということです。

14-2.講演会2

日本のエネルギーの現状と課題
次に、私が携わってきた太陽光、風力、小水力の三つを通して、日本のエネルギーの現状と課題ということをお話させていただきます。日本の発電の割合ですけれど、大震災により福島の事故が起きる前の10年くらいは大体原子力が30%、火力が2/3、水力が7~8%というところでした。再生可能エネルギーとか自然エネルギーとかはその当時から言われていました。その定義は厳密には違うのですけれど、ほとんど同じことで全体の0.7%しかなかったのです。その0.7%の内訳を見るとバイオマス発電が約半分。このバイオマスというのは自治体がゴミ処理をした熱を発電に使っているのが大部分で多いのです。それから大型の風力発電。これはコスト的に合うので多かったのです。太陽光は今でこそ注目を浴びてますけれど、全体で見ると0.7%の中のなおかつ10%くらいしかなかった。これが2007年の時の割合だったのです。
それが大震災後の2012年では、原子力は1基だけ半年くらい生きていたので1.7%。原子力で不足した部分を火力が補っています。その大部分は液化天然ガスで石炭もけっこう頑張っています。石炭と言うと戦後の古い話で、日本ではもう石炭を掘っていないから本当にこんなにあるの、と疑問に思われるかも知れませんけれど全て輸入です。輸入先は大体オーストラリアとか中国ですけれど、コスト的に割合いいのです。水力の割合はほとんど変わらない。そして再生可能エネルギーが0.7%だったのが2012年度で1.6%に伸びたということなのです。あれだけはやしたててやっても全体から見るとこの程度なのですね。水力と合わせて大体10%、国の政策としては今後20%まで増やそうとしていますけれど、うまくいくかどうか危ないところです。
再生可能エネルギーの中でさっき言いましたように太陽光発電は非常に少なかったのですけれど、2012年から急激に増えてます。それに対して風力発電はここまではグーっと伸びたけれど、以後ほとんど変わっていません。地熱発電もほとんど変わってない。バイオマス発電も若干増えていますけどそう大きく変わっていません。そうすると、再生可能エネルギーがこういうふうに伸びてきた大部分は太陽光発電が増えたからだということがお分かりいただけると思います。
外国の再生可能エネルギーの状況をみると、統計の年が違うので一概に言えないのですけれど、日本の1.6%に対しドイツは14.7%、スペインは18.5%、イギリスは6.2%、アメリカでも4.4%です。どうして日本はこんなに少なくヨーロッパはこんなに再生可能エネルギーが使えるかというのがポイントなのです。これは今まさに問題になっていますけれど、日本は送電網が非常に弱いのです。その理由は、東日本は50ヘルツで西日本は60ヘルツと中部地方の東で二分されている。その境界に3か所変換所がありますけれど、変換電力量が非常に限られているのです。それから北海道とか四国とか九州という島の問題があるのです。関門海峡とかにケーブルは通っていますけれど、1本か2本しかないのです。そういう島の電力の系統はものすごく弱いのです。今本当に強いのは東京電力と東北電力の地域と中部電力と関西電力の地域だけなのです。
一方、ドイツやスペインがなぜ強いかというと、ヨーロッパでは国を超えて送電線がメッシュ状に走ってます。それでそれぞれの国で持っている電力の強いところを生かすことが出来るのです。例えばフランスなら原子力、北の方スウェーデンあたりの地域は水力発電が強い。水力とか原子力は常時安定して発電してくれるから、そこに少々不安定要因のある自然エネルギーを持ってきても大丈夫ということなのです。ドイツは原子力を止めて自然エネルギーを増やしており、スペインもそういう政策にだんだんなっていますけれど、それが出来るのです。ドイツは海上に設置する洋上風力発電が主力で、太陽光もドイツやスペインでどんどん増えています。こういうふうにしてヨーロッパは再生可能エネルギーは非常に普及が進んでいますけれど、日本はまだまだ低いということです。日本はそのベースが弱いところに不安定要素の多い再生可能エネルギーを持ってくるからいろいろな問題が起きてきます。今まさに新聞紙上を賑わしている買取価格をどうするかという問題が出てきていますね。そこがヨーロッパと全然状況が違うところなのです。

固定買取り制度と電気料金
太陽光発電が2009年11月から固定買取り制度をやっています。これは家庭とかメガソーラで発電した電気を送電線につないで電力会社に送ります。これを一般の消費者が使うわけで一般の消費者は賦課金を電力会社に払う。それで電力会社は事業者に固定価格で支払うという制度です。最初10KW未満いわゆる家庭用が48円で10KW以上が24円だったのです。それで家庭用はグーンと増えたのですけれど、1KW24円では買う電気と売る電気がほとんど同じ単価なのでメガソーラーはあまり出来なかったのです。もっと普及を進めようということでそちらの値段を上げて、家庭用は普及が進んできたので少しづつ下げてきたのです。
実は、私はちょうど2009年に家を立て替えたものですから、そこで太陽光発電を設置して48円で契約出来たのです。10年間48円で買い取ってくれるという非常にありがたい制度です。私は家の電気の売買のデータをとってきました。1月2月は暖房を使うので買った方が多いのですけれど、3月から11月までズーッと売った料金の方がはるかに多いのです。48円の単価だから余計そうなるのですけれど、これだと3.5KWの設備費を5年で回収できるという計算ができます。
この買い取った価格を賦課金と言っているのですけれど、買い取った分は電気料金に賦課金を上乗せしていますから国民全体が負担してるわけです。その賦課金が最初は20円とか21円だったからそんなに目立たなかったのですけれど、最近はこれが200円以上になってしまいちょっと問題になっています。太陽光発電をやりたくても出来ないのに賦課金だけどんどん来るというような問題が出てきたのです。今年5月に電気料金が大幅値上げされたのですけれど、再生可能エネルギーの余剰電力を買い取った分を還元する分が225円です。毎月皆さん225円払っているのです。それを今後どうするかというのが問題です。電力会社によって若干違いますけども、消費税も上がって全体として430円値上げという状態です。
家庭用の買取り価格はさっき言ったように48円で出発したのですけれど、これが2013年度は38円になります。24円だった10KW以上のメガソーラーを、もっと普及させようというので38円に設定したのです。これなら儲かるということで、いろいろな業者がやり始めてメガソーラーが非常に普及していったわけですけれど、それが問題になり2014年度は買取り価格を下げて、太陽光は38円だったのが37円、大型のものも36円から32円に減っています。何故問題になったかというと、価格の高い時に契約だけしておいて工事は後からゆっくりやろう。価格は20年間保証されており、設備費は時間と共にだんだん安くなる傾向にあるから、もう少し待ったほうがより儲かる、というような計算をするわけです。ですから買取枠は急激に増えたけれど、実際の発電量はあまり増えていないのです。電力会社は契約がこれだけあるからそれだけ電気が来るということを前提にしてシステムを組むのですけれど、実際には太陽光の電気が予想通り来ない。システムがうまく働かないと停電が起きる恐れがありますからもう契約はできませんよ、ということで今新聞紙上を賑わしているのです。

コスト的に見るとどうなのかというと、設置条件によって変わるから一概に言えないのですけれど、住宅用の太陽光発電は今の36円とか32~33円ですと大体トントンで設備費が回収できるかなというところです。メガソーラーは36円ですとかなり有利です。小型の風力発電は55円ですごいいい値段ですけれど、さっき言ったように難しいからやる人はいないのです。大型の風力発電は22円ですから10~15%稼働すれば採算が合うと言われてえます。昔はずいぶんよかったと思いますけれど、環境問題なんかがあって認可がなかなか取れない。小水力発電は原価は20円くらいで買い取り価格は今30円ですからこれはかなり有利です。そういうふうな状態になっています。ちなみに、原子力は大体10円前後ということです。ただ計算のやり方はいろいろ難しく、地域住民に対する対策費だとかいうのが入っていない純然たる発電価格ですので、一概にこの数字で比較するのはちょっと乱暴だとは思います。
家庭用の電気料金は最近どういうふうになってるかというと、以前は大学で授業をしている時「日本は電気料金が世界一高い」と言ってればすんだのです。ところが最近は電力の自由化が進んで、かなり中位になっています。逆にデンマークとかドイツ、イタリアなんかがかなり高くなっていますし、スペインも高くなっている。それは採算的にあまり合わない再生可能エネルギーを積極的に導入しているためで、どうしてもコスト的には高くなるということを示しています。韓国は今でも一番安いのですけれど、今原子力なんかが問題になっています。アメリカはかなり安いです。どうしてかというと電力に税金がかからないのです。日本は消費税も含めてしっかり税金がかかっていますが、アメリカは税金かからないので安いのです。
産業用で見ると、昔は日本はダントツに高かったのですけれど、今はイタリアが1位です。日本が高いと言っても1KWあたり15円です。家庭用は24円ですから大規模な所は安く小さな所は高くということです。日本の電力会社はほとんど家庭用で儲けてるとよく言いますけれど、15円と24円はでは全然違いますよね。

エネルギー問題の今後
エネルギー問題の対応策ですけれど、家庭レベルでの取り組みとなると、最近あまり言わなくなりましたけれど、まず節電を徹底することです。省エネとしては、技術革新により非常に進んだ省エネ機器を積極的に導入する。それから創エネ、これは主に太陽光ですね。蓄エネとしては今後電気自動車を有効利用して、夜間安い電気料金で充電して昼間使わない時は余剰電力を電力会社に戻す、というような有効利用が考えられます。
システムとしてどういうふうにやるかというと、家庭単位ではスマートハウスと言いますけれど、これを導入して全体のエネルギーをコントロールするような仕組みを作らないとだめだと思います。更に進んで地域でエネルギーをシステム化することをスマートグリッドと言います。本当はマイクログリッドと言い今でも学会ではそう言っていますけれど、オバマ大統領がスマートグリッドと言い出したので日本ではそう言っています。これはエネルギーは地産地消が基本であり、あるエリアでエネルギーを地産地消してどうしても過不足がある時は電力会社とつなごう、ということを地域としてやっていこうという考えです。ですからある程度大きい範囲が必要で、発電としてはメガソーラーと小水力発電が中核になると思います。そして全体をマネージメントして整備し、過不足分を電力会社と売り買いするということです。
まず家庭でスマートハウスをやって、次は地域でスマートグリッドというふうに将来的には進んで行くと思います。その場合にIT通信情報技術を導入した制御をやっていこうということで、今うちの大学が日本で唯一の認証機関になっていますけれど、スマートハウスの具体化としてスマートメーターというのが今後普及していきます。今は各家庭に電力量計がついていますけれど、今後10年間で全部スマートメーターに切り替えるという計画なのです。
スマートメーターは何が違うかというと、そこに光ファイバーが入っている。その光ファイバーの通信回線を使って、家庭内の電気をコントロールできるし電力会社へのコントロールもできるという仕組みです。具体的にどんな利点があるかというと、今は月に1回電気料金を検針に来ますけれど、あれがもういらなくなってしまう。光ファイバーの通信回線を通して電力会社が確認すれば料金が決定できるのです。
さらに電力会社側から考えると、将来万一電力が足らなくなった場合、今回の大震災の時のような計画停電、地域ごとに全面的に停電するというようなやり方はやらなくてすみます。電力量が80%しか無いから各家庭にも80%しか供給しませんよ、80%の中でどう使うかは各家庭で優先順位をつけて決めてください、ということも出来るようになります。
家庭の側では、エアコンとかの機器をエコネットという規格に合ったものにしないといけませんけれど、外からでも全部コントロール出来るようになります。例えば岐阜駅に着いて後10分後に家に着く。今日は寒いからそれまでに部屋を暖かくしたいと思えば、スマートフォンなんかをポンと押すと暖房器具が動き出す。それから、外出した時に「今日ひょっとしたら電気消すの忘れたかもしれない」というような不安になることがありますよね。そういうのも全部スマートフォンを使うと光ファイバー通信経由で全部チェックしてくれる。そういうふうに、いろいろな使い方ができるのです。
このスマートメーターは今ちょっと遅れていますけれど、もうそろそろ東京電力が販売を始めます。それが出てくるとまたいろいろな状況が変わってきて、これがこれからの電気の使い方の恐らく主体になると思います。それはまさに私が山小屋でずっと経験してきたこととまったく同じことなので、そういう時代になったというのが今日の私の結論なのです。
山小屋では節電は本当によく従業員に徹底されており、省エネも徹底されています。LEDなんかの省エネ機器は売り出した頃から山小屋では積極的に導入しています。創エネは太陽光発電を導入し、蓄エネはバッテリーを使用している。ただバッテリーはコストがものすごく高いけれど寿命はそう長くない、山小屋では大変これに苦労しています。一昨年講演された穂苅さんの槍ヶ岳山荘では、恐らく年間1千万くらいバッテリーにお金を使っていると思います。さっき話したスマートハウスの概念は、経験則で実際に山小屋では昔からやっているのです。平地で現在やっていることは山小屋ではすでに実践済みなのです。それで山小屋から学ぶことが多いというのが私の経験です。以上でこの話は終わります。

「山の日」の話
最後に「山の日」の話をします。「山の日」の成立と今後の活動ということで、皆さんもうご存知のように「山の日」が制定された歴史をちょっとお話させていただきます。
「山の日」の制定運動は2002年に国連が定めた国際山岳年が始まりです。日本でもいろいろな行事をやりましたけれど、その総括として日本に「山の日」を制定しようという提案があったのです。ただし、これは祝日ではなくて単に「山の日」を制定しようという提案だったのです。ところが、これがなかなかうまくいかず提案は潰れてしまいました。山岳団体の動きが鈍く、大きな活動にならなかったのです。実は、日本山岳会も全然積極的に動きませんでした。
新しい動きはそれから7年後の2009年、日本山岳会の当時の宮下会長が年頭の会報で「山の日」制定運動を提案しました。それで日本山岳会では「山の日」のプロジェクトチームを作って取り組むことになったのです。その根底に宮下会長が言っているのは、100周年の記念事業で中央分水嶺踏査という一大イベントをやりました。北海道から九州までの日本の中央分水嶺を千人ぐらいの会員で全部踏査したのですね。それによって裾野がうんと広がったのです。それを踏まえて、もっと裾野を広げるために「山の日」というのを制定しようということを提案されたのです。中央分水嶺踏査の時に私はたまたま事務局長をやっていたものですから、そういうご縁もあって私も活動に参加することになりました。
まず2012年の4月に、日本山岳会や日本山岳協会といった有力な山岳5団体で協議会を発足させました。そして、パンフレットの配布などの運動を地道に展開していましたけれど、その年の秋頃に国会議員による「山の日」制定の呼びかけが始まったのです。そしらた選挙の直前だったためか100人近くの議員がワーッと賛同したのです。そして、2013年4月20日に超党派の「山の日」制定議員連盟が発足しました。
一方、国民運動も展開していかないといけないというので「全国山の日制定協議会」が発足しました。これは山岳団体だけでくて、地方自治体の人とか産業界の人とかはもちろん、国会議員の一部の人も入るという形で、議員連盟と車の両輪でやっていこうということになりました。「全国山の日制定協議会」の会長が今自民党の幹事長をやってる谷垣さんです。谷垣さんは東大山岳部の優秀な方で、日本山岳会の会員でもあります。谷垣さんが中心で、その下の副会長が今日みえている尾上前日本山岳会会長ということなのです
国会における審議は、2013年11月22日の国会議連13回総会で「山の日」を8月11日にするということを決定します。これにも紆余曲折がありまして、山岳5団体は6月の第一月曜日、ちょうど夏山に入る前の一番いい時を「山の日」にしようと決議したのですけれど、国会議員の手にわたるとそういう話はどこかへ行ってしまうのです。何故かというと、「日本は祝日が多過ぎる。その上に更に祝日を増やすのは反対だ」との声が経済界から上がり、「それだったらお盆の頃なら実害が少ないだろう」ということで、お盆が13日から16日ですから「8月12日にしよう」と最初は決まったのです。ところがそう決めた途端に、ご存知のように8月12日は日航機の墜落事故があった日ですので、群馬県知事なんかは「その日を祝日にするなんてとんでもない」という話になりました。国会議員の方はいい意味で柔軟性がありますから、「それじゃあ1日前にしよう」ということで8月11日になったのです。
もう理念も何もなくて私たちにはよく理解出来ないのですけれど、まあそういうことで8月11日にしようという案を3月28日に議員立法として衆議院に提出しました。国会というのは議案が出てもいろいろもめるじゃないですか。私なんかもそんな簡単にはいかないなと思っていたのですけれど、トントントンと進んで3月28日に提出して4月23日に衆議院の内閣委員会、28日に衆議院の本会議、連休明けの5月21日に参議院の内閣委員会、23日に参議院の本会議を通過したのです。国会議員もやる気になれば簡単に出来るじゃないかということなのですけれど、これには本当に驚きましたね。こういうことで国会を通過して、再来年から8月11日が祝日「山の日」ということに決まったわけです。衆議院は票が読めない起立多数ですけれど、参議院は賛成213反対15でした。反対はどこだったかの二つの会派が自主投票にしたため党議拘束をかけなかったのでこれくらい反対があったのです。

その後の動きですけれど、それまで「全国山の日制定協議会」だったのですけれど制定されてしまったので5月28日に「制定」を取って「全国山の日協議会」としてスタートしました。もちろん谷垣さんがそのまま会長でやっています。そして国民運動を展開しようと各地で記念フォーラムなんかをやっていますけれど、各都道府県には今までのいきさつがあるので何も8月11日にこだわらないで運動を展開しています。例えば国連の国際山の日は12月11日です。各都道府県によってもいろいろ違い、例えば岐阜県は8月8日を「岐阜山の日」として活動している。それぞれ今までのいきさつがあるので、これはこれで各都道府県のやってることを尊重して行こうという姿勢です。
「山に親しみ山の恵みに感謝する」というのを大きなキーワードとして、チラシを作って配布して「山の日」の意義をアピールする活動をやったりしています。上高地で今年8月11日にプレ・プレイベントとしてやったのですが、その日は大雨で、バスターミナルの所でちょっとチラシを配っただけで終わりました。岐阜県側でもその日に西穂山荘の前で揺りましたけれど、やはり天気が悪くて大変でした。お隣の東海支部は夏山フェスタということで新聞社と組んでやって、初日は3850人、2日目は2800人、合計6650人というものすごく大勢の方が来ていただいた。これが今後一つの指針になって、全国でこういうことをやろうじゃないかという動きも多分出てくるのではないかと思います。
今後どういう展開になっていくか分かりませんけれど、いろいろ話しが進んでいます。作曲家の船村徹さん、この方も日本山岳会の会員ですけれど、今「山の日協議会」の顧問になってもらっていますがものすごく熱心です。「山の日」の歌を作ろう、作曲は俺が引き受けてやるよとおっしゃっています。それで新聞などで歌詞を公募したらどうかという動きもあるのです。これからどういうふうにやっていくかが課題です。日本山岳会でも検討しなくてはいけないし、岐阜支部の皆さんにもいろいろお願いに上がると思います。以上で一応私の話は終わらせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

Q&A
Q:槍ヶ岳山荘も小水力をやっているのですが、槍沢とかの国立公園内の水利権はどうなっ  ていますか。
A:先ほど、今から15年くらい前に上高地で小水力発電やったという話をしました。これは
技術的にはそう難しくないのですけれど、行政関係の許認可を得るのが大変だったのです。まず国立公園の中ですから環境庁、特別天然記念物の指定地域なので文化庁、土地は林野庁、水は一級河川の梓川の枝沢から取るというので当時の建設省、現国土交通省。それ等への書類は全部、地元の今は松本市になっている当時の安曇村を通して長野県、そして本庁へいくのですね。全部許可を取るのに3年かかりました。
その中で今お話のあった水利権が一番難しかった。建設省へ行くと「それは難しいね」とけんもほろろ。ところがもう時効だから言っていいと思うのですけれど、日本山岳会というのはやはり有力な方がいっぱいいるのですね。そういう方に相談してみたら「そうか、ある人を紹介してやるから」と紹介してもらって、その当時の建設省の局長さんに会いに行ったのです。そしたら「やろうとしていることはいいことなのはよく分かる。だけど法律というのはいろいろ難しいんだよ。ちょっと時間をくれ」ということでした。 その局長さんは実に理解のある方で、せっかく環境にやさしいいいことをやるんだから何とかしようとして新しくルールを作ってくれたのです。というのは「一級河川の枝沢だから権利は建設省が持ってるけれど実際の管理は地元の市町村がやってる。だから地元の市町村がいいと言えばいいことにしよう」という新しいルールを作ってくれた。その上流にその水を使ってる人がいなければ、地元の市町村がOKすればいいですよというルールを新しく作ってくれたのです。それが今でも適用されていろいろな所でOKになっています。それは一級河川の話ですね。
さっき言った槍沢ロッジもやっているのですけれどこれは水利権無しです。なぜかというと湧水でやってるからで、自分の土地の中の湧水だからこれは水利権無いですよね。 奥多摩の三条の湯というのは東京都の水道局が管理しており東京都民の水がめになっている。そこに頼みに行ったら「そういう環境問題に役立つなら小屋もきれいになるしいいですよ」ということで、その頃になると理解がだいぶ進んできたのですね。やはり最初は大変でした。
Q:木曽川など一級河川でも、上流部でその上をだれも使っていない所を探せば大丈夫とい  うことになりますか。
A:私がそれを決めるわけではありませんけれど、そういう事例がありますよというお話を  されれば、十分可能性はあると思います。
Q:我が家では13年前にソーラーをつけたのですが、発電量がどんどん減っていくのですね。  やはり古くなったということでしょうか。寿命年数は大体どのくらいでしょうか。
A:穂高岳山荘で30年前に設置した太陽光発電はその後蝶ヶ岳の小屋に移して今でも発電し  ていますけれど、発電量は全然落ちていません。ちょっと専門的な話になりますけれど、  太陽光発電も時代とともに変わってきています。一番最初の頃はシリコンの単結晶とい  うタイプで、宇宙開発にも使うものすごくいいものですけれど、その代わり値段も高い。  それは今でも大丈夫です。その後にいろいろ新しいタイプが出てきており、一応10年と  いうことになっています。けれど、それは法定年数ですからもっと長持ちするのは当然  で、13年くらいで衰えるのはちょっと巡り合せが悪かったのかな(笑)。
どこのメーカーか知りませんけれど、外国のメーカー品ですごく安いのがあります。  某国の製造工場を案内されたことがあったのですけれど、クリーンルームの管理なんか  いい加減なもので、破片をほうきで掃いているのですね。それを見るとやはり信用でき  ないなと思いました。安ければいいというものではないということを改めて実感したわ  けです。国の名前は申しませんが、大体皆さんお分かりいただいたと思います(笑)。
Q:太陽光パネルの表面は掃除しなくてもいいのですか。汚れがちょっと気になります。
A:掃除をすれば若干もちますけれど、ほとんど効果は変わりません。ある国の研究機関で  一方は毎日掃除して一方はやらないのを比較したのですけれど、ほとんど差が無いので  す(笑)。あるメーカーの特許なのですけれど、最近はパネルの縁がゴミをちゃんと受  けるようになっていて雨が降るとそこから砂なんかが落ちていくように出来ている。こ  れはものすごく素晴らしい発想です。ですから、一生懸命磨いてやるよりはやはり自然  が一番いいみたいです。(拍手)

14-3.講演会、集合写真

平成26年11月14日 講演

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