夏季北アルプス山行 医学調査 樅沢岳

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夏期北アルプス山行

双六方面、樅沢岳(2755m 三角点なし)-医学的研究を目的とした-

02-1.樅沢岳

岐阜支部の夏期北アルプス山行は、医学的研究を兼ねて行うのがここ数年恒例となりつつあります。昨年は大雨で中止となったため、今年も昨年と同じく双六岳・鷲羽岳方面で再度計画しました。参加者は岐阜支部のベテランメンバー4名、岐阜医療科学大学の教員3名(内2名は岐阜支部会員)、同大学学生2名の計9名でした。
研究のテーマは『山行中の血圧の変化を明らかにする』としました。山行中の血圧の変化については「運動による交感神経の影響や低酸素刺激で血圧は上昇する」という説と、「脱水により血圧は低下する」との相反する意見があります。どちらが正しいか実際に測定してみようというのが今回の目的です。ベテランメンバー4名には事前に岐阜医療科学大学に来ていただき、医療検査器具を使用して、基礎データとして動脈硬化の程度(血管年齢)の測定をさせて
いただきました。年齢相当の血管年齢の方も、実年齢より血管年齢がずいぶん若い方もいらっしゃいました。普段の運動(山行)によって動脈硬化が進まず、血管年齢が若くなっていると考えられます。
前泊組は、新穂高のゲート近くにあるホテルニューホタカに宿泊しました。築50年くらいの古い建物で、ご主人がひとりで管理運営しているとても質素な宿でした。ただ源泉かけ流しの温泉は最高で、特に屋外にある露天風呂は大自然と一体となれました。
22日の午前6時に新穂高のゲートに集合。各自に手首で測定できる携帯型血圧計を配布しました。ワンタッチで測定ができるので血圧計を装着したまま登山をしてもらい、各地点で血圧測定をしようという計画です。出発前の血圧測定でかなり血圧の高い方がいらっしゃいました。もし病院でこの血圧の数値を見た場合、「このままでは危険です。内服薬で血圧を下げてから登山をしてください」と指導されるような数値でした。このまま一緒に出発しても大丈夫かなと不安になりましたが、普段から元気で登山をされている方なのでゴーサインを出しました。各休憩ポイントで測定しましたが、計測された血圧と脈拍数は血圧計本体に記録されるので、山行終了後にメモリを回収して結果を確認すれば良いので楽です。
このところ天候が不順であったため心配していましたが、初日の午前中は快晴でした。ワサビ平小屋から小池新道を通って昼食ポイントの鏡平山荘をめざしました。途中でオコジョに出会うことができました。鏡平で昼食をとり、池のまわりで寝そべるなどして休憩。ところが午後になると雲行きがあやしくなりました。双六小屋まで急がなくてはいけませんが、教員の一人が膝関節痛を訴え思うように歩けなくなってしまいました。ベテランチームのサポートをいただいて、何とか15時30分に全員が双六山荘に到着することができました。山荘では9名で一部屋をあてていただき、老若男女で楽しいひと時を過ごすことができました。山荘に到着してから本格的に雨が降り出し、天候は悪化してきました。
2日目は鷲羽岳を目指す予定でしたが、夜間は激しい雨風が続き、天気予報をみても天候の回復は期待できそうもなかったため、そのまま下山することにしました。ただ、何処のピークも踏まないのも残念なので、体調の良いメンバーのみでガスの中樅沢岳のピークを目指しました。樅沢岳からの下山中に視界が開け、鷲羽岳、双六岳、笠ヶ岳などを見ることができました。
双六小屋で全員が集合し、前日に来た道を下山。途中で弓折岳のピークを踏み、鏡平山荘、小池新道経由で新穂高まで下山しました。下山時も教員チームが遅れてしまい、ベテランチームにサポートしていただきました。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
下山中はそれほど天候が悪化することもなく、この天候であればあわてて下山しなくてもよかったかなとも思いました。山行リーダーとして、判断することの難しさを実感しました。いろいろと勉強することの多い山行になりました。
血圧測定の結果ですが、登山前に血圧が高かった方は、なんと登山中は正常血圧になっていました。適度な運動で末梢血管が拡いたのでしょうか、それとも気分的にリラックスできたためでしょうか。理由ははっきりしませんが事実は事実です。また、他のメンバーも血圧は若干低下し、血圧が上昇することはありませんでした。この測定結果だけで何らかの結論が言えるわけではありませんが、貴重な記録なので、平成27年5月に開催される日本登山医学会学術集会で岐阜支部の研究報告として発表しようと考えています。
最後に、今回の山行では教員3名と学生2名が大変お世話になりました。岐阜支部に入会していなかった教員1名も今回の山行をきっかけに岐阜支部入会を決めました。今回の山行で支部会員を1名増やすことができました。学生さんたちも社会人になったら入会してくれるといいなと思っています。                                [加藤義弘 記]

[日 時] 平成26年9月22日(金)、23日(土)
[場 所] 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂 新穂高温泉~双六小屋
[参加者] 加藤義弘、今峰正利、神山敬三、林 靖子、藤田純江、和田裕子、肥後恵美子、      松浦 愛(学生)、高橋奈津恵(学生)
[タイム] 22日 新穂高ゲート6:00―ワサビ平小屋7:00-鏡平山荘12:00-双六小屋15:30
23日 双六小屋6:00-樅沢岳6:45-双六小屋7:30-弓折岳9:30-鏡平山荘11:30         ―新穂高ゲート15:30(解散)
[地 図] 1/20万;高山  1/5万;上高地、鎗ヶ岳
1/2.5万;笠ヶ岳、三俣蓮華岳

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