昨年9月、白山を平瀬道から登った時、初めて三方崩山の名前に接した。「いい山だ、機会があれば行くべきだよ。」と、その時に教えてもらった。今回の山行に一も二もなく、すべてのスケジュールを調整してエントリーしたのは、耳から離れることのなかった強烈な山名に反応したからである。
さて当日、梅雨入り前の最高のコンデション。5時に美濃総合庁舎集合。チェンソーを片手に満面の笑みの後藤さんがみえた。どうやら車道の途中に倒木があり、チェンソーでそれを処理する、と言う。さすがに岐阜支部である。林業をテーマにした邦画のワンシーンを勝手に想像した。6時半、道の駅飛騨白山着。3台の4WD車に分乗、噂の車道を登る。かなりの悪路だ。が、しばらくすると後藤さんからNGサイン。降りてみると倒木は1本だけではなく、雪の影響を思わせる青々とした葉を蓄えた大木達が、完全に道を塞いでいた。これは気合の入る山行になる、と素直に思った。
7時、当初の予定通りにA隊6名、B隊6名で登山路に入る。ミズナラ等の大木の急坂をしばし歩くと、やがてブナばかりの美しい林になる。8時過ぎ、4等三角点で一本休憩を入れる。竹中美幸さんが後からくるB隊への差し入れ、漬け輪切りレモンをリレーする。1200mを越えたあたりからは、尾根がところどころで見えてきた。雪渓の白、春を告げる青葉、荒々しい岩肌、そして青空のコントラストが美しい。絵に描いたような美しさ、ではなく、美しい風景のオリジナルを目に焼き付ける。この段階では、の感想である。
しばらくすると、いよいよ尾根が近づいてきた。どうも両側が崩れている個所もある。奈落の状を呈している。どうにかなるさ、と初めのうちは粋がっていたが、途中からは気合ボタンより非常ボタンを押したくなった。それでも山頂到着は予定より30分早く10時30分。
アラサー(20代後半)の男性二人とソロの方が先客で昼食をとられていたが、崩れ方が想像以上だと、話をしている。新しく崩れた思われるところは、鎖の先にロープを足してあったが、鎖の支点石は浮いており、かつロープも崩れに対して短い。下りは気を付けないと、と各々語る。「うーん、前と違うなぁ、崩れが出ているぇ。この次来る時は、この山頂もあるのかなぁ。」と、3回目登頂の某会員。確かに尾根にあった四等三角点も、山頂の道標も傾いていた。無言で昼食をとり、おもむろに紐を締めなおす。
その後B隊が到着する。先輩たちは満面の笑み、年齢自慢の話に花が咲いている。艶やかな大先輩達と接するうちに、下りへの恐怖感は和らいできた。神山さんに靴ひもの締め方を教わり、東明さんに滑らない歩き方の講習を受ける。
下りは今峰さんの指示で、竹中サブリーダーの次を歩かせていただいた。教わりながら、すべてを実践する。難所を過ぎると緊張が解けたのだろうか、尾根の風がココチ良かった。今、データを振り返れば、黄色いスミレやら愛らしい花々の写真は、すべて下りで撮影されている。現金なものだ。
下りはメンバーの脚の具合を見極めるシーンがあり、最後はAB隊合流での下山となった。予定時間を過ぎたが、いろいろな話で大いに盛り上がる。
登山口で山の水を得る。この水は抜群に美味しかった。道の駅での足湯をしながらの、コーラもおいしかった。
山はルーツを想像させるネーミングが多い。この三方崩山、いつからこの名前を頂戴したのだろう。名前にふさわしい山であった。可憐な花との出会いも楽しかった(たくさんの花がありすぎて、黄色のスミレしか覚えていない)。又いつかチャレンジしたいと思うが、違う風景、違うルートの山になっているような気がする。いずれにしろ、会員として基礎体力、登山スキルの向上に注力する、と誓う次第です。 [塩入英樹 記]
[日 時] 平成30年6月3日(日) (晴れ)
[場 所] 岐阜県白川村平瀬
[参加者] 後藤 允(L)、今峰正利、梅田直美、苅谷敬三、神山敬三、小林和雄、 塩入英樹、白木貞次、竹中美幸、竹中佳美、東明 裕、馬渕 等 計12名
[タイム] 美濃総合庁舎5:00=道の駅飛騨白山6:30~6:40―上部登山口7:00―三方崩山 10:30~11:30―上部登山口16:00~16:20―道の駅飛騨白山16:30~17:00(解散) -美濃総合庁舎18:30=(東京24:00) [地 図] 平瀬(金沢3-2)、新岩間温泉(同3-4)